政府が2007年7月にタミルの虎を追い出すのに成功して以来、東部地方はスリランカの政治的論争の中心になってきた。複数のエスニック集団の住む東部の「解放」は、Mahinda Rajapaksa大統領の政府の主な振り返るべき政治的功績となっている。政府は2008年3月と5月に行われた地方政府と地域評議会の選挙を東部地方の民主制の復活のしるしとして歓迎してきている。それは元テロリスト-Tamil Makkal Viduthalai Puligal(TMVP)として知られるタミルの虎を離脱した分派-が民主的政党へと変身したことを歓迎しているのである。政府は憲法修正13条のもとに地域に権限を委譲すること、経済発展と紛争後の再構築の主要な計画に取り組むことを約束した。
 東部地方はタミルとシンハラ両方のナショナリズムの中心であり、それぞれの独自の政策に向けての土地を要求している。タミルナショナリストにとって東部地方は北部と同じくらい’タミルの故郷’として欠かせない地域である。両方の土地をあわせると、シンハラからの政治的・文化的な支配のない自由が約束される土地であり、タミル人やタミル語を話す人達が多数を占めて、物理的にも政治的にも安全で、アイデンティティも認識されうるだろう。シンハラナショナリストにとっては、東部地方は、再発見されて祝福されるべき豊かなシンハラと仏教徒の歴史を持ち、スリランカ島の他のどこよりも、生存と多数派として振る舞う権利がある土地である。

 過去25年以上にわたって、タミル武装勢力と政府軍が実権を求めて闘い、領域を奪い合い続けて東部地方はひどい暴力や破壊、政治的不安定に苦しんできた。タミルとシンハラとムスリムの市民は大虐殺や退去、不安定さや経済的な剥奪を皆耐えてきた。コミュニティはばらばらにされてきた。それぞれでばらばらになり、さらにそのなかでもばらばらになっていき、深い分断がタミル人同士、タミル人とムスリム、タミルとムスリムとシンハラとで存在する。ムスリムナショナリズム-大部分はタミルとシンハラのナショナリズムの暴力の狭間にとらわれての反応としてなのだが-は東部で新興してきており、まだ武装には転じていないものの、強さを増してきている。

 150万人の居住者がいる東部地方は3つの地域に分けられる。Trincomalee、Batticaola、Amparaである。Trincomaleeは戦略的、経済的に重要な港があり、ムスリムがタミルよりも最大勢力として増大してきており、1983年の戦争開始以降における明らかな変化である。北部地方と接しており、東部地方の中でもっとも軍事的に重要で、政争が激しい地域である。3つの中で最も南にあるAmparaはムスリムが最大勢力で、わずかにシンハラがそれよりも少なく、タミルはかなり小さい勢力となっている。Batticaolaは3/4がタミルで、1/4がムスリムである。東部地方全体でみると、タミルは40%を越える程度、ムスリムはそれを少し下回り、シンハラは20%を越える程度である。
 本報告においては東部における現在の政治状況と衝突の構図について考察していき、土地をめぐる対立や、予定されている経済開発や政治的な再編について特に焦点をおく。